📋 この記事でわかること
- 変動費・固定費・限界利益の意味と違い
- 損益分岐点とは何か
- 銀行・税理士法人の実務でどう使われているか
- 営業マンや社会人が知っておくべき理由
- 簿記を学ぶとどこまで理解できるか
📖 前回の記事:簿記は本当に必要?銀行員から税理士法人へ転職した私が感じた"数字を見る力"の重要性 →
前回の記事では、簿記は経理だけの知識ではなく、営業・金融・管理職など幅広い仕事で役立つという話をしました。
その中で触れた「利益率」「コスト」「資金繰り」。今回はその具体的な中身として、変動費・固定費・限界利益を解説します。
「なんとなく聞いたことはある」という方も多いと思いますが、実務でどう使われているかを銀行・税理士法人での経験をもとにお伝えします。
変動費とは?
変動費とは、売上の増減に連動して変わるコストのことです。売れれば増え、売れなければ減る。シンプルに言うとそういうコストです。
主な変動費の例
| 業種 | 変動費の例 |
|---|---|
| 製造業 | 材料費・外注費・製造に使う電力費 |
| 飲食業 | 食材費・消耗品費 |
| 小売業 | 仕入原価・販売手数料 |
| サービス業 | 外注費・業務委託費 |
🏦 銀行での実例
銀行で法人営業をしていたとき、融資審査で会社の決算書を読む機会が多くありました。変動費を見ることで、
- 売上が増えたとき、コストはどれくらい増えるか
- 原価率が業界平均と比べて高いか低いか
- 仕入コストのコントロールができているか
「売上は伸びているのに利益が出ていない」という会社では、変動費が売上の伸びに比例して増えすぎているケースが多くありました。
固定費とは?
固定費とは、売上の増減に関係なく、毎月一定額かかるコストのことです。売れても売れなくても、必ずかかる費用です。
主な固定費の例
| 種類 | 固定費の例 |
|---|---|
| 人件費 | 給料・社会保険料・役員報酬 |
| 家賃 | オフィス・店舗・倉庫の賃料 |
| リース料 | 機械・車両・コピー機など |
| 減価償却費 | 設備投資の費用を毎年計上するもの |
| 保険料 | 各種損害保険・生命保険 |
💼 税理士法人での実例
現在の税理士法人での業務では、クライアントの月次決算を見ながら経営状況を把握しています。固定費を見るポイントは、
- 固定費の総額が売上に対して重すぎないか
- 売上が落ちたとき、固定費をカバーできる利益があるか
- 固定費削減の余地があるか
特に中小企業では、売上が落ちても固定費は変わらないため、固定費の重さが経営を圧迫するケースをよく見ます。
限界利益とは?
限界利益とは、売上から変動費を引いた利益のことです。
限界利益 = 売上 − 変動費
「限界」という言葉が難しく聞こえますが、要は固定費と利益をまかなうための原資です。
具体的な計算例
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売上 | 1,000万円 |
| 変動費 | 600万円 |
| 限界利益 | 400万円 |
| 固定費 | 300万円 |
| 営業利益 | 100万円 |
この会社の限界利益率は40%(400÷1,000)です。限界利益率が高いほど、売上が増えたときに利益が出やすい構造になっています。
限界利益が重要な理由
- この会社は固定費をカバーできているか
- もう少し売上が増えれば黒字になるか
- 利益を出すために何をすべきか
損益分岐点とは?
変動費・固定費・限界利益を理解すると、損益分岐点も自然にわかります。損益分岐点とは、利益がゼロになる売上高のことです。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
先ほどの例で計算すると、
300万円(固定費) ÷ 0.4(限界利益率)= 750万円
この会社は売上が750万円を超えると黒字になります。
🏦 銀行での融資判断での活用
銀行で法人融資を担当していたとき、損益分岐点は必ずチェックしていました。
- 現在の売上は損益分岐点を大きく超えているか
- 売上が落ちたとき、どこまで耐えられるか
- 設備投資で固定費が増えた場合、損益分岐点はどう変わるか
営業マンが知っておくべき理由
「これって経理や財務の人が知ればいい話では?」と思う方もいるかもしれません。ですが、営業職でもこの知識は役立ちます。
①値引き交渉の判断ができる
値引きをすると変動費は変わらないまま売上が減るため、限界利益が直接削られます。「この値引きは利益的に許容できるか」を判断できるようになります。
②経営者との会話が深くなる
中小企業の経営者は、日々コストと売上を気にしています。変動費・固定費・限界利益を理解していると、「御社の固定費の重さを考えると、この提案がコスト削減につながります」といった会話ができます。
③自分のビジネスにも応用できる
副業や独立を考えている方にとっても、変動費・固定費・限界利益の考え方は必須の知識です。
簿記を学ぶとどこまで理解できるか
| レベル | 理解できること |
|---|---|
| 簿記3級 | 売上・費用・利益の基本的な仕組み |
| 簿記2級 | 原価計算・損益分岐点・製造業の会計 ← ここで本格的に学べる |
| 税理士試験 簿記論 | より深い会計処理・財務分析 |
変動費・固定費・限界利益は簿記2級の範囲(工業簿記)で本格的に学べます。ただし、考え方の基礎は簿記3級から始まります。まずは簿記3級で会計の基礎を固めてから、2級で管理会計・原価計算へ進むのが王道の流れです。
まとめ
- 変動費:売上に連動して変わるコスト(材料費・外注費など)
- 固定費:売上に関係なく毎月かかるコスト(家賃・人件費など)
- 限界利益:売上 − 変動費。固定費と利益をまかなう原資
- 損益分岐点:利益がゼロになる売上高。固定費 ÷ 限界利益率で計算
銀行での融資判断・税理士法人での経営分析、どちらの現場でも毎日使う概念です。営業・金融・管理職・副業など、数字に関わるすべての仕事で役立つ知識なので、ぜひ簿記の学習とあわせて理解を深めてみてください。
📚 次のステップ
変動費・固定費・限界利益を本格的に学びたい方は、簿記2級(工業簿記)がおすすめです。まずは簿記3級から始めましょう。